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私の中で、ストンと幕が下りた。 最初の怯えが嘘みたいだ。 今ではもう、この時間が無意味なものに思えて、なんだかどうでもよくなってきた。 「先日、吉川さんと会っていたのは確かですけど、おつきあいは、していません。 なんで吉川さんが社長にそう言ったのかも分かりません」 気丈を繕い、私は真っ直ぐ城田さんを見て話す。 嘘じゃない。 だって正式な交際じゃなかった。 「は?……あ、あぁ、そう、なの?」 結論が出た。 吉川さんはやっぱり私に本気ではなかった。 はい、以上。 私の恋、これにて終了。 「それじゃ……」 もう、こんなふうに巻き込まれたくない。 これ以上城田さんと話したくない私は、無表情でバッグを持ち、すくっと立ち上がる。
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