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ゴク……、と、私だけじゃなく、笹原君と葵ちゃんの唾を飲む音まで聞こえた気がする。 居酒屋のワイワイザワザワした空気が、このエリアでだけ凍結した。 「ど、どうしよ……」 着信音はまだ鳴り続けている。 「出るしかないだろ」 「先輩、頑張ってください!」 ……。 えいっ! 2人の後押しが私の親指に通話ボタンを押させた。 「……も、もしもし」 緊張のあまり口の中が乾き、少し掠れた声が出る。 『あ、もしもし、道野さん? 久しぶり』 「お、久しぶりです」 ホントに久々に聞く城田さんの声。 そうだ、こんな声だった。 知的さと女性らしさを感じさせる、色味がかったほんの少し高い声。 私の4つ上、28歳の大人っぽい声だ。
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