12-2

2/17
4107人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「信じられないです!吉川さんっ」 その葵殿に話をしたのは翌日、月曜日の昼休み。 一通り話し終えると、葵ちゃんは箸で口に運ぼうとしていた白米をポトッとデスクに落として、そう叫んだ。 みんな出払っていたからよかったものの、私は慌てて、シーッ、と人差し指を立てる。 智佳子と美春には相談できなかったが、葵ちゃんには何故だか素直に話すことができた。 「今から電話して、今夜呼び出しましょう!先輩」 「や、ちょっ――」 以前同様、勝手に熱くなって電話へ伸ばされる葵ちゃんの手を必死に止める。 「ごめん……。 ホントに話したくないの、もう……」 とはいえ、仕事ではまた会うんだけど。 「……先輩」 本気で訴える私に、葵ちゃんは眉毛をハの字にして、泣きそうな顔をする。 「先輩、いいんですか? 言い足りないことないんですか?吉川さんに」 「うーん……、なんか……、もういいやって気分になっちゃった。 風船に穴があいちゃったみたいに、気持ちも一気にしぼんじゃったし」 葵ちゃんの言葉にも動じないくらい、私の心は正直、疲れている。 「今日、メイク手抜きなのも、そのせいですか?」 「う……。さすが葵ちゃん。 うん、いろいろと面倒くさくなっちゃって」 「ダメですー。せんぱぁい……」 葵ちゃんまでしゅんとなってしまい、私は、 「大丈夫!しばらく男の人はいいから。 キレイになる必要ないの」 と、から元気を装う。 「逆ですよ、先輩! キレイになって見返してやるって思わなきゃ!」 「そういうもんなの?」 「そうあるべきです!」 やはり師匠は甘やかせてくれない。 智佳子と美春も、私の横に正座で並ばせなければ。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!