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「吉川さんは、そりゃあ、大人だしできる男だし?
傷付くことなんてないんでしょうね。
私は子供っぽいし経験不足だし免疫無いし、いちいち傷付くんです。
そちらにとってはただのからかい半分の冗談だったとしても、都合がいいだけの利用しやすい女だったとしても、やる気をごっそり持っていかれるほど、傷付いたんです!」
勢いで、ダンッ、とその場で床を踏み鳴らし、ヒールの靴が脱げそうになる。
一気に捲し立てて話したせいで、鼻と口がフガフガになって、思わず目に涙が溜まった。
感情的なのは百も承知。
みっともないのも千も承知。
でも、言ってやった!
お酒、多めに飲んでおいてよかった。
ちゃんと、言いたいこと、言えた。私。
怯まないように、フンッと大量に鼻から息を吐き出すと、間近で上から見下ろしている吉川さんが、冷静な顔で首をやや傾ける。
そして、薄くて整った口をゆっくり開いた。
「……。
大人だから傷付くことは無い、と?
私も人間ですので、傷付くこともあります。
大人になるにつれ、傷付いているという事実を見て見ぬふりをするのが上手になっただけで、傷は確かにあります。
それに」
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