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「じゃ、行くか。二次会。
もう始まってるだろうけど」
「え?
あ、あぁ……、うん」
また元の路地の方へ歩き出した笹原君。
私は、その後ろをついて行きながら、ハンカチを取り出そうとジャケットのポケットに入れてそのまま固まってしまった手に、意識を集中させる。
忘れてた……。
吉川さんに、あの時、入れられたもの……。
なんとなく何なのか勘付きながらも、今の音の正体を確かめるべく、そろりとそれをポケットから取り出す。
気まずさからか、前を歩く笹原君は無言且つ振り向かずに、なおもツカツカ進んでいく。
「……」
私の開いた手の平の中でカチャリと小さく音を立てた物は、革のキーケースからはみ出した……鍵だった。
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