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「ちょっと、ボサボサになるからやめてよ」
「笹原さん、セクハラですよ、それ」
横の葵ちゃんも注意してくれた、その時。
「中園さーん、邪魔しないの」
と、背後から今日何度も聞いた、あの声。
葵ちゃんの横にすかさず回り、その首をスーツの腕で緩く締めた高迫さんが、
「カップルは2人だけにさせてあげないと」
と、こちらが恥ずかしくなるほど葵ちゃんに顔を近付け、笑いながら言った。
こんなの見ると、笹原君のセクハラなんて可愛いものだ、と思ってしまう。
「カップル?
……あぁ、それはウ――」
「しー。そんなのどっちだっていいの。
俺は後ろの人の出方が見たいだけ」
――え?
笹原君には聞こえなかっただろうが、私には高迫さんが葵ちゃんに耳打ちした声が聞こえた。
高迫さん、もしかして嘘だって勘付いて……。
ていうか、後ろの人って――。
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