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そして、胸に空洞ができたかのような何とも言いようのない気持ちが、私自身を笑った気がした。
……私、あろうことか、期待してた……。
ドラマみたいに、漫画みたいに、吉川さんが私を繋ぎ止めるようなことを言ったり、プチ修羅場みたいになっちゃったりするかもって、
……どっかで、思ってた……。
だって、さっき、あんなキス……。
「道野……」
酔った頭で考えがまとまらず、ぐちゃぐちゃになっているところに、笹原君が、
「あんまり言いたくないけどさ……、やっぱ、吉川さんにとってただのコマだったんだよ、道野は」
と、言葉も選ばずに核心をついた。
「……」
繋がれたままの手が一層強く握られたけれど、私の心と体は逆に、しおれた花のようにくたりとなった。
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