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「傷付いた顔させたくないけど、今だけちゃんと傷付けよ。
そして、ちゃんと吉川さんのこと吹っ切れ」
ぐいっと引っ張られ、笹原君はツカツカと歩を進め出す。
私はその勢いでこけそうになったが、
「ふ、ふっ切ってるよ。もう、既に」
と、もつれる足を整えて早足になりながら、笹原君の後頭部に強がりを投げつけた。
「じゃあ、なんでそんな泣きそうな顔してるわけ?」
「――っ」
顔に熱が集まり、そのことで一層涙腺が刺激され、あぁ私、泣く寸前だ、とやっと自覚する。
「俺は」
くるっと横に曲がり、今よりもっと細い路地に入った笹原君。
店と店の間、自転車がたくさん停められていて、人が2人並んで歩くのがやっとくらいのその道に、私も引き込まれる。
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