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「……あっちの方に歩いて行ったよね、確か……」
まだ息が上がっている中、さっき吉川さんが向かって行った方向へ歩を進める。
……こっちに曲がったかな?
ヴー、ヴー、ヴー……。
「わっ!電話」
ちょうどT字路になっているところで左へ顔を向けたのと、ポケットの中のケータイが振動したのはほぼ同時だった。
「え?あれ?……切れた?」
慌ててケータイを取り出した私は、その瞬間に着信が切れたことに気付く。
と同時に、後方で小石を踏む音。
「同じタイミングでしたね」
「ひゃっ!!」
おそらく何メートルも背後からの声に、まるですぐ後ろで驚かされたかのように、肩を上げる。
「電話した直後に貴方が視界に入ったので、切りました」
ゆっくり振り返りながらも、私は声の主が誰なのか既に分かっていた。
ケータイを片手に持った吉川さんが、顔を斜めに傾けて微かに笑っていた。
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