14-2

30/35
前へ
/35ページ
次へ
まだ息が切れている私は、小さく肩を上下させながら、吉川さんを見る。 さっき傷付いたこと、社長の前で偽装交際に乗ったこと、その前にあんなキスをされたこと、なんだかいろんなことに対する自分でも収拾のつかない感情が、走ったことで乱れた頭の中を一層乱れさせた。 でも、とりあえずは当面の目的を果たさねばと思い、私は乾いた唇を開く。 「か……、鍵を……」 「あぁ、気付きましたか」 カツ……、と綺麗な靴音を響かせながら、小路をこちらへ向かってくる吉川さん。 「あ……」 今更ながら、本当に今更ながら気付いた。 何度、こういう手にひっかかるんだ、私は。 だって、言うタイミングなら、さっきだってよかったはずだ。 気付かなかった私も私だけど。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3800人が本棚に入れています
本棚に追加