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「走って来ましたか?息が」
本当に少しよろけてしまい、吉川さんが私の肩に触れる。
「……なんで?」
私は肘を上げ、その手を振り払った。
自分の中では強く振り払ったつもりだったが、力が入らずに、その手はヘニョリと落ちた。
「なんでこういうことするんですか?」
そして次の瞬間、涙をこらえる子供みたいに、顔がクシャクシャになる。
「もう、社長は納得済みじゃないですか。
私は別に、この期に及んで本当のことバラしたりしませんから。安心してください。
よかったですね、利用した甲斐があって。
よかったですね、私が扱いやすいバカな女で」
何を口走っているんだろう。私は。
頭の中が一層グルグルしてきた。
ついでに、無言で聞いている吉川さんも、3人くらいいらっしゃる。
「それに吉川さんにとってはどうでもいいことなんでしょ?私が他の人と付き合うこと。
じゃあ、もうほっといてください。
暇つぶしのからかい相手なんて、吉川さん相手なら、金払ってでも立候補する人がいるはずですから」
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