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社長は50代半ばで、白髪まじりではあるものの品が良く、経営に厳しいやり手な部分と、社員を大事にする温厚で優しい部分を兼ね備えた、尊敬に値するお人だ。
私の声かけに気付いた社長は、おちょこに残っていたお酒をくいっと飲んで空にして、私の方へ差し出しながら、
「あぁ、道野くんだね。
楽しんでいるかい?」
と穏やかに笑った。
「はい。……ハハ」
正直、疲労困ぱいです、とは言えずに笑顔を作り、とっくりの注ぎ口を支えながらお酌した。
「頑張っているようだね」
「……え?」
注いだお酒を一口飲んだ社長が、伏せていた目をゆっくり上げ、簡単に2、3言話して席に戻ろうと思っていた私の目をしっかりと見た。
「2年目だというのに、経理の責任者に後輩の指導役、慣れない中で大変だろうに、こなしてくれて助かっているよ」
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