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そこまで思い巡らせた時、バチリと吉川さんと視線がぶつかった。 静かに私を見据える目。 まるで、言いたければ言えばいい、とでも言うような、冷静で動じない目。 「え……と……」 なんで、こんなに傷付けられてもなお、いいようにされてもなお、私はこの目に囚われているんだろう。 「……はい。 追々、そういう話をしていければ……と」 気付けば、口が勝手にそう動いていた。 ……あぁ。 こんなノミのような心臓じゃ、この場でありのままを話すことなんて……できない。 「そうかそうか。楽しみだね」 「ハ……、ハハ……」 目が無くなるほどの社長の笑顔に、つられ笑い。 吉川さんの方は見ることができない。 なんだか完全な敗北宣言をしたみたいで、恥ずかしさと情けなさで涙が出てきそうだ。
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