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背中には、私の後ろ髪に触れる吉川さんの指が微かに当たったまま。
ドッ、ドッ……っと、私の心臓の音は、まるで重低音で体を振動させているみたいだから、吉川さんにも伝わっているかもしれない。
……“好き”かどうか、なんて。
今日一日で、思い知らされた。
ここまで意識して、ここまで流されて、ここまで心臓が忙しなく動けば、嫌でも自覚せざるを得ない。
私はまだ、吉川さんのことを全然吹っ切れていなかったんだ。
いいように使われたと、ちょっとやそっと恨んだからって、無理だった。
漫画を大量に読んだだけじゃ、無理だった。
しばらく会わなかっただけじゃ、無理だった。
会っただけで、気持ちはこんなにも容易く舞い戻るんだから……。
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