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クラッと、お酒のせいではない眩暈がした。
とりあえず、照明がこぼれているリビングの方へヨロヨロと足を進める。
吉川さん、どうやって私を運んだんだろ。
ていうか、怒ってる。怒られる、絶対。
この醜態、どうお詫びすべきか……。
「……」
ドアを開けると、予想通り、吉川さんがいらっしゃった。
前回も前々回も座った、あのカーキのソファに。
……静かな寝息を立てながら。
「……っ!!」
わっ!
……超レア。レア過ぎる。
お風呂に入ったからか、完全に下りている前髪。
黒のVネックのトレーナー。
下はジャージ。
腕組みして俯いた姿勢で、片側の肘かけに寄り掛かっている。
……本当に、寝てるのかな?
ゴク……と何故か生唾を飲んでしまった私は、変な好奇心と緊張の狭間の中、忍び足で吉川さんのそばまで近寄る。
そしてソファの前で膝を抱えて静かにしゃがみ、寝ている吉川さんを下からおそるおそる覗き込んでみた。
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