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こちらを二度見した彼女は、笹原祥太と少し言葉を交わしてから、小走りで向かってきた。
そして車に乗り込むと、案の定、またいつものひきつった顔。
「彼はよかったのですか?
ずっとこちらを見ていましたが」
「あ、いえ、だ、大丈夫です」
どもる彼女の返事を聞いて車を出すと、笹原祥太の横を通り過ぎる。
彼は相変わらずこちらをじっと見ていて、表情には道野結月を案じているような、そんな色が見て取れた。
その目が、単なる同僚を見るだけの目じゃないように思えたのは、自分の思い過ごしか、ほのかに生まれた小さな独占欲からか。
そんなことを思いながら、道野結月のガチガチに緊張してバッグをぎゅっと握りしめている様子を視界に入れ、静かな焦燥感を覚えた。
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