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料理が運ばれてきて、彼女に酒をすすめ、1時間半ほど食事をしながら話をした。 思ったとおり、彼女は酒が入ると饒舌になり、そしていくぶん陽気になった。 酒が入ると豹変する人間は苦手だが、彼女のそれは例外である。 本当に美味しそうに天ぷらを食べ、美味しいを連呼する彼女を見ていると、不思議と自分もそれを美味しく感じ、充実した食事ができたような気にさせられた。 なにより、よく笑う。 有無を言わさない疑似交際で、無理やり誘った食事だというのにもかかわらず、おそらくそれを忘れて純粋に食事を楽しんでいる彼女は、やはり興味深い人間だと思った。 「あともう少しだけ、お時間いただけますか?」 店から出て、車に乗り込んでから、自然とこんな言葉が出たのは、そんな彼女をもっと知りたいと思ったからなのだろう。
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