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「……はい」 なんだ? この硬直してガチガチの顔は。 また逆戻りか? 「……」 例のごとく小さな苛立ちを感じる。 と、同時に、静かな加虐心に火がついたような気がした。 怯えられれば怯えられるほど、それが気に食わない自分は、道野結月を追い詰めたくなる。 いや、そんな趣味はなく、彼女に限ってのことだ。 少しずつ顔と顔の距離を詰め、彼女の顔を覗き込む。 予想通り、一層目を見開いて、頬をピクピクさせる彼女は、ゴク、と生唾を飲むリアルな音を、静かな車内に響かせた。 なんなんだろう。 彼女の怯えに輪をかけさせて、自分は何がしたいのだろうか。 本当に、彼女といると、自分でも未知の自分が出てきて、始末が悪い。
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