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伸ばしかけた手も払われ、完全なる軽蔑と嫌悪と憤慨の色を、顔に滲ませている彼女。
頭の中で静かに、そして当然のように、終わりという言葉が浮かんだ。
自分にとって道野結月は、もっと時間を共有したいと思える貴重な女だし、手放しがたいのは確かだ。
でもそれは、利用の延長でしかない。
いまだに俺は、彼女に対する感情に、興味以外の名前を付けることができないから。
「道野さん。その紙袋、私の服では?」
けれども、急に助手席のドアを開け、車から降りようとした彼女に、気付けばそんな、どうでもいいことを口走っていた。
去る女を追ったことなどない自分が、そんな幼稚な引き止め方をしていることに驚く。
予想通り、その紙袋をバサッとこちらへ投げるように突き出す彼女。
一層怒りをあらわにしている。
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