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……あれ?
「ったっ……」
「……」
自分は冷静なはずだった。
が、自分の行動に後から気付く。
いつのまにか彼女の突き出された手を力任せに引っ張って、自分の目の前まで引き戻していた。
「離してください」
「……」
ひるみながらも、必死に俺を睨む彼女の顔は、今度はちょうど外灯があたる角度で、はっきりと見えた。
涙をためながらの、本気の拒絶の顔。
先程から同じような顔をされているというのに、くらりと小さな眩暈を覚えた。
「何か言い訳でもあるんですか?」
「いいえ。弁解も否定もしません」
するつもりはない。真実だから。
「なら、離してくださいっ。帰ります」
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