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俺はケータイを取り出して、彼女の登録画面を見る。
どのみち返してもらわなければいけないものだと、ためらわずに発信ボタンを押した。
――と、ちょうどその時、背後で急いでいる様子の靴音が耳に入る。
呼び出し音ワンコール目と、そちらの方を振り返ったのは、ほぼ同時だった。
俺は視界に入れた姿に、即座に通話終了ボタンを押す。
「わっ!電話。
え?あれ?……切れた?」
「同じタイミングでしたね」
「ひゃっ!!」
「電話した直後に貴方が視界に入ったので、切りました」
肩を上げて驚いた後ろ姿に話しかける。
ゆっくり振り返った道野結月。
細い路地にほのかに灯る外灯と、点々とした店の灯りが彼女の顔を照らす。
走ってきたためかそれとも酒のせいか、少し上気した頬と弾む息が、無駄に俺を刺激した。
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