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「……何が、そんなに可笑しいんですか?」
「……」
「人を傷つけておいて……、よく、そんなに笑えますね」
彼女を離すことができないまま、噛み付かんばかりの剣幕の彼女と問答を繰り返していると、急に俺を睨むその目の色味が変わった。
俺のネクタイの辺りから、挑むような真っ直ぐな視線で、顔をしっかり上げて。
「吉川さんは、そりゃあ、大人だしできる男だし?
傷付くことなんてないんでしょうね。
私は子供っぽいし経験不足だし免疫無いし、いちいち傷付くんです。
そちらにとってはただのからかい半分の冗談だったとしても、都合がいいだけの利用しやすい女だったとしても、やる気をごっそり持っていかれるほど、傷付いたんです!」
全身が伸び上がるほどに力のこもったその言葉に、確かに彼女の気持ちが体当たりをしてきた。
でも……。
“大人だしできる男だし”?
“傷付くことなんてない”?
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