3992人が本棚に入れています
本棚に追加
「んっ!!」
一瞬、目を見開いた彼女がぼやけた視界に映った。
逃げ場をなくして、両手を封じて、無理やり唇を塞ぎながら壁に押さえつけて。
一層暴れる彼女に体重をかけ、抵抗が無駄なことを悟らせようとする。
「んむ、んつりまっ、うつりますっ、ヘル……」
一瞬離した隙に、顔をそむけようとする彼女が、ピントのずれた言葉を吐く。
「構いません。うつせばいい」
それを再度角度を変えて覆った口で飲み込み、そんなことを気にすることができるくらいなら、こんなことなどしていない、と心の中で嘲笑する。
なりふり構っていられない。
ただ、今、この時この場の自分の感情に従っているだけの口づけ。
想いの伝え方の順序が間違っていることくらい、十分承知だ。
でも、そんなこと二の次で、売り言葉に買い言葉でもいいから、とにかく彼女が欲しかった。
最初のコメントを投稿しよう!