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でも、否定するでもなく、高迫の口の軽さに呆れた様子は、肯定そのもので……。
「相手は?」
気付けば、みっともなく問い質していた。
「さっき本人に名前聞いた。笹原君。
いくらラブラブだからって、こういう席でいちゃつくの禁止だよねー。
そう思わない?吉川」
道野結月に聞いたはずが、代わりにスラスラ答える高迫。
「……」
……笹原。
笹原祥太……か。
だから、さっき……。
冷静にそう思い返す自分と、その事実に視界が歪むような衝撃を受けている自分。
怒りや脱力や独占欲や後悔や、おおよそ不条理で身勝手なあらゆる感情が、頭を急激に沸騰させては冷やし、彼女が頬を染めて照れくさそうに俯いている様子が目に入ったところで、その全ての感情の無意味さを知った。
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