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笹原祥太が勢いよく彼女と繋いだ手を上げたものだから、道野結月は少しよろけた。
その表情は焦りと恥じらい。
見ていて、気分の良いものではなかった。
「……」
……なんで彼は、わざわざ俺に報告をするのだろうか。
俺と彼女との僅かな交際試用期間のことを知っていての、牽制のつもりだろうか。
そんな苛立ちを最小限に抑え、
「そうですか」
とだけかろうじて答えた。
その後、二次会に行くか否かを聞かれ、行かない旨を伝えると、すぐに方向転換をし、反対方向へ歩き出した。
「……っ」
予想以上に腹立たしく、そして空しさを感じている自分。
……後の祭り。
今の状況を見事に言い表した言葉が頭に甦り、俺はビルの壁にこぶしの側面を打ち付けた。
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