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彼女の目も表情も、2人で会う時間を重ねるにつれて、確実に俺に好意を告げだしていた。
俺は、彼女は自分を許容してくれると、一度離れたくらいで想いはそうそう揺らぐはずはないと、心の片隅で多分胡坐をかいていたんだ。
性懲りもなく、過去に学習もせず、そしてどこまでも都合よく。
だから、こんなにも喪失感と虚無感を伴う。
「……」
……違う。
そんなことより、気付けば想いが膨らみ過ぎていたから……だ。
自覚が遅かったとか、認めたくなかったとか、そんなの言い訳で。
多分俺は、自分で思うよりずいぶん、道野結月のことが……。
「……後の祭り、か」
再度頭に浮かんだ高迫の言葉を呟き、不毛な熟考に終止符を打つ。
俺は皮肉な笑いをこぼして壁から体を離し、ゆっくりと歩き出した。
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