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「違うっ!!そうじゃなくてっ」 俺の顔を一瞬抜けた顔で見上げていた彼女は、ぶんぶんと頭を振り、訳の分からないことを言う。 そんなに頭を振ると、ただでさえ回っている酒が……。 「笑わないでくださいっ! 質問に答えてください!」 今度は子供のように大きく地団太を踏む。 そして案の定、ふらりと後ろへよろける道野結月。 「道野さん、危ないです。倒れますよ」 すかさず手を出して、その背中を支える。 その瞬間、彼女の心地よい体温と重みが、俺の右手を伝ってタガを外させた。 もう、知るか。 男がいるというのに、ここに来たのが悪い。 この手に倒れてきたのが悪い。 背中を支えたまま、俺の影の中で涙をひと筋流す彼女を見下ろしながら、既にこの手を離す気は失せてしまった。
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