3989人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「違うっ!!そうじゃなくてっ」
俺の顔を一瞬抜けた顔で見上げていた彼女は、ぶんぶんと頭を振り、訳の分からないことを言う。
そんなに頭を振ると、ただでさえ回っている酒が……。
「笑わないでくださいっ!
質問に答えてください!」
今度は子供のように大きく地団太を踏む。
そして案の定、ふらりと後ろへよろける道野結月。
「道野さん、危ないです。倒れますよ」
すかさず手を出して、その背中を支える。
その瞬間、彼女の心地よい体温と重みが、俺の右手を伝ってタガを外させた。
もう、知るか。
男がいるというのに、ここに来たのが悪い。
この手に倒れてきたのが悪い。
背中を支えたまま、俺の影の中で涙をひと筋流す彼女を見下ろしながら、既にこの手を離す気は失せてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!