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「……」 道野という言葉に、返そうとしていた踵を戻す。 彼の体が影になって座っている相手が見えなかったが、話しているのは道野結月か? さっきまで笹原祥太と高迫に挟まれていたはずなのに。 その時、ゆらっと体を傾けた藤谷部長の向こうに、口を思いきりへの字に曲げた道野結月の顔が見えた。 目の前の藤谷部長をきつく睨んでいるその顔に、今日は関わらないでおこうと心に決めていたにもかかわらず、勝手に足が動く。 「おいおい、なんだ?上司にその態――」 「酒の席とはいえ、言葉が過ぎます。藤谷部長」 気付けば、話しかけていた。 あぁ……、頭を冷やすつもりが全くの逆効果だったと、俺は部屋から出たことを頭の片隅で悔いた。  
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