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「こんばんは」 「……こ、こんばんは」 酔って絡みがちになっていた藤谷部長を宴会の部屋へ戻し、座ったままの道野結月に視線を移しながら声をかけると、思いきりその視線を逸らされつつ、小さな声が返された。 久しぶりに間近で見た道野結月。 動揺して目を泳がせている様は見慣れているが、今日はまるで捕食者に狙われた小動物みたいだ。 けっこう酔っているのが傍目からでもわかり、頬が見事に色付いていて、目も若干潤んでいる。 小さな眩暈。 こんな状態の彼女を笹原祥太と高迫に至近距離で見られたことを、自分のものではないのに、何故か許せないと思ってしまう。 「先月の巡回は、急に失礼しました。 高迫に聞いたと思いますが、急用が入って」 「いえ」 「……」 「……」
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