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「……っ」
……重い。
玄関の扉が背後で静かな音を立てて閉まると、自分だけ靴を脱ぎ、大きく1つ息をついてから、寝室へと向かう。
「へへ……」
道野結月は俺の背中で、いまだむにゃむにゃ言っている。
寝ている人間を背負うのは、なんでこうも重たいのだろうか。
あの後……。
なかなか目を開けない彼女に何度か声をかけたり、軽く揺すったりもしたが、無理だった。
バッグの中の私物やケータイを見て、自宅へ送り届けるという選択肢もあったが、気が咎めてやめた。
ひとまずタクシーに乗り、運転手に自分の家の住所を告げたものの、途中で起きるだろうという願いは見事に裏切られ、彼女は最後まで目を開けることもなく。
タクシーから降り、全体重を預ける彼女を背負いながら部屋まで運んで、今に至る。
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