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また深夜の静けさが部屋に戻る。
時計の秒針が響くほど、彼女と俺の心音が拾われるのではないかと思うほどの沈黙が、2人の間に流れた。
「……す、好きじゃ……ない、です」
ようやくかすれた声を出し、顔を背けてそう言う彼女に、
「目を見て言っていただけますか?」
と、間髪入れず詰め寄る。
「好きじゃないっ」
途端に声を張り上げた彼女。
顔を戻して至近距離で俺を睨みつけながら、すうっと空気を吸い込んだ。
「前にも言いましたが、私は私を好きな人じゃなきゃ嫌なんです!
ちゃんと言葉で示してくれる人が――」
最後まで言わないまま、彼女の目からは涙がひと筋流れた。
確かに聞いた。
以前、車の中で、同じことを言われた。
あの時はまだ、道野結月への気持ちの自覚が無かった。
いや、認めようとしていなかった。
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