24

23/36
前へ
/36ページ
次へ
また深夜の静けさが部屋に戻る。 時計の秒針が響くほど、彼女と俺の心音が拾われるのではないかと思うほどの沈黙が、2人の間に流れた。 「……す、好きじゃ……ない、です」 ようやくかすれた声を出し、顔を背けてそう言う彼女に、 「目を見て言っていただけますか?」 と、間髪入れず詰め寄る。 「好きじゃないっ」 途端に声を張り上げた彼女。 顔を戻して至近距離で俺を睨みつけながら、すうっと空気を吸い込んだ。 「前にも言いましたが、私は私を好きな人じゃなきゃ嫌なんです! ちゃんと言葉で示してくれる人が――」 最後まで言わないまま、彼女の目からは涙がひと筋流れた。 確かに聞いた。 以前、車の中で、同じことを言われた。 あの時はまだ、道野結月への気持ちの自覚が無かった。 いや、認めようとしていなかった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3987人が本棚に入れています
本棚に追加