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「……」 ……彼女には、今、笹原祥太がいる。 そのことを再認識した俺は、彼女を、その嫌悪する女のカテゴリーに自ら引きずり込もうとしていることに気付いた。 そして、そんな自分自身が既に嫌悪の対象であることにも。 同意だとしても無理やりにだとしても、今彼女を抱いたところで、後悔が待っているのは歴然だ。 好きだと伝えたとして、彼女がそのまま流され、この手に自身をゆだねたとしても、それは変わらない。 いや、なおさら、だ。 自分に対しても道野結月に対しても、当然のように嫌悪が待ち構えている。 「単純。 じゃあ、今道野さんを好きだと言ったら? 心変わりして、やらせてくれるの?」 「やらっ――」 欲しい、と思う強い衝動の裏に、彼女をそんな女に成り下がらせたくないという葛藤。 そんな一縷の理性と自制が、自分に汚い言葉を吐かせた。
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