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「……」
涙目、真っ赤な顔。
既にもう見慣れた顔。
下唇を噛んで、毛を逆立てた威嚇するネコのように、俺の目から視線を外さず、必死に睨んでくる。
その表情に、いつもなら煽られていたはずが、逆に頭の中の霧が晴れていく感覚を覚える。
既に答えが出ていた。
「そういう顔もするんですね」
多分この人は、かわいいって言っても同じ反応をする。
そんな子どもみたいな彼女を、俺は好きになった。
あぁ……そうか。
今思えば、俺が彼女の思っていることが手に取るようにわかったのは、俺が彼女のことを分かりたい、知りたいって、最初からどこかで思っていたからだ。
分かりやすいというより、自分が気になってよく見ていたからだ。
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