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「かっ、からかうなら別の人にしてください」
「いえ。からかうなら貴方で」
「……っ!」
彼女の顔が一層赤くなって、顎にシワを作る。
冗談を交わせる程度には冷静になってきた。
後は手を離すだけ。
「……貴方に交際を申し込んだのは」
彼女を……離すだけ。
「口実のためだったわけじゃない」
真下に落とした言葉に、彼女の顔の強張っていた表情筋がふわっと緩む。
「じゃあ……なんで……」
素直な疑問を、言葉とともに顔いっぱいに表し、あどけない顔で見上げてくる彼女。
「純粋な興味からです」
「え」
嘘はない。
最初はただ、本当に興味と、実験と、利用だった。
本気の恋愛をする予定なんてなかった。
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