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「……」
数秒間、見つめあったまま、沈黙が部屋に流れる。
そして彼女は、先程からの茫然とした表情を一つも変えることなく、
「…………はい」
と返事をした。
自分の往生際の悪さに、ふっと笑う。
相手がいる女に対して、これ以上何を期待していたというのだろうか。
「わかりました。
じゃあ、貴方も後で消去しておいてください」
「……は……い」
自分で話を進めているにもかかわらず、胸が痛んだ。
数少なかったけれど、濃くて鮮やかな彼女との時間が、フォトアルバムが風に吹かれて勢いよくページを繰られ、そして最後にパタンと閉じられたような、切なさの滲んだ空しさを感じた。
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