24

33/36
3978人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
「……」 数秒間、見つめあったまま、沈黙が部屋に流れる。 そして彼女は、先程からの茫然とした表情を一つも変えることなく、 「…………はい」 と返事をした。 自分の往生際の悪さに、ふっと笑う。 相手がいる女に対して、これ以上何を期待していたというのだろうか。 「わかりました。 じゃあ、貴方も後で消去しておいてください」 「……は……い」 自分で話を進めているにもかかわらず、胸が痛んだ。 数少なかったけれど、濃くて鮮やかな彼女との時間が、フォトアルバムが風に吹かれて勢いよくページを繰られ、そして最後にパタンと閉じられたような、切なさの滲んだ空しさを感じた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!