3974人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
「わあっ、すみませんっ」
途端に早送りになったような道野結月。
勢いよくお辞儀をして、風のように外へ出た。
「……」
閉まった扉。
その音に続く静寂。
聞こえるはずの遠ざかる靴音が、聞こえない。
「……あ」
……しまった。
最後の最後で……。
頭を押さえて、玄関の壁にうなだれかかる。
「……かっこ悪……」
ずるずると壁を擦りながら、床に尻をつき、今日一番のため息を吐いた。
ほぼ同時に、玄関扉の向こう、まるで逃げるように走り去る靴音。
それを耳に入れながら、頭を壁に預け、玄関照明に手で目を覆いながら、「ハ……」と小さく笑みをこぼした。
最初のコメントを投稿しよう!