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「道野さん」
「……ん」
その瞬間、彼女が満面の笑みを浮かべた。
起きたと思って一瞬手を止めたが、目は開かない。
「へへー……」
何かいい夢でも見ているのだろうか。
あまりにも幸せそうなその顔に、心臓が不規則な律動を始めた感覚。
「……っ!」
と、次の瞬間、ぐるんと顔だけ俺の手の方に寝返り、2、3度頬擦りならぬ額擦りをした道野結月。
その猫のような仕草にさすがに驚き、やはり起きているのではないかと顔を覗き込む。
「きもちー……。ふふ……」
「……」
寝ている……。
寝言だ。
俺はもう片方の手で既に崩れかけている自分の前髪をかき上げ、小さく息を吐いた。
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