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座っている体をひねって、手だけ触れた状態で覆い被さる。
俺の体と顔が影になって、道野結月の寝顔は辛うじて見える程度になる。
唇をなぞっていた手を額へ移して、目尻に親指を添え、そのまま耳の上へと髪を梳く。
暗がりで見えるあどけない顔が一層幼く見えるのに、反対にどうしようもなく女っぽく見える彼女は、女でありながら嫌悪の対象じゃない。
ただ一人。唯一。
「……ふ」
当たり前だ。
こんな寝こみを襲うような真似をするほど、彼女に惚れているのだから。
「……」
誰か止めろ、と頭の中で自制の声。
けれども、とても静かに、緩やかに、彼女のこめかみに唇を落とす自分。
胸の内のけたたましい警鐘に反する冷静さは、きっと自分が自分を止められないと初めから分かっているから。
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