25

2/33
前へ
/33ページ
次へ
「え?先輩。 そこ、逃げ帰るとこですか? どういうことか聞くために、もう一度戻るとこじゃないですか?」 月曜日。 仕事帰りに寄ったイタリアンレストラン“BEATO”にて、慰労会後の大体の話を葵嬢に聞いていただいた。 そして、聞き終えた後の第一声が、それだった。 「え……。だって……」 よく分からずに頼んだオーロラソースのパスタをフォークでクルクル巻きつけながら、私は頭を垂れる。 ごもっとも。 ごもっともです、確かに。 だって今、あの“惚れた女”発言が気になって気になって仕方がないから。 じゃあ、葵ちゃんが言うように、あの時戻ってちゃんと聞けばよかったんだけど、吉川さんのあまりの帰れオーラにおののいて、また扉を開けるなんてことは到底できなかった。 まぁ、パニックになっていたっていうのも十二分にあるのだけれど。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3917人が本棚に入れています
本棚に追加