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「いやー。しかし、ひでぇ雨だ。 女房に迎えに来いって電話入れようとしたら、ケータイ忘れてることに気付いてさ。 こんな日に最低だよ、ったく」 横殴りの雨なのだろう、濡れた肩をハンカチで拭きながらズカズカと中に進み、自分のデスクの引き出しを勢いよく開けるのは、カバ……もとい藤谷部長。 やっと、 「お疲れ様です」 と声に出すと、 「時間かかってんなー、お前。 で?終わりそう?」 と、酒臭い息を吐きながら近寄ってくる。 ……最悪。 いや、期待しちゃいけないんだけど、労いの言葉一つもなしに、残業させている部下に『時間かかってる』なんて。 自分は飲みに行ってたくせに。 疲れと空腹でイライラしているのも手伝って、ついついムッとした顔をしてしまいそうになるが、ぐっとこらえる。
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