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「――ってぇっ」 爪が顔にヒットしたらしく、頬を押さえた部長は、瞬時に苦虫を噛み潰したような顔になる。 「おい、お前何様だ? 俺が人事に一言言えば、お前の給料くらい簡単に下げられるんだぞ?」 なんでそんな話になるんだ? 酔っ払いのセクハラやパワハラほど厄介なものはない。 ここで愛想笑いの一つでもしてかわしておけば、そしてこちらが謝れば、後は丸くおさまるのかもしれない。 でも、それが賢明だって分かっていても、嫌だ。無理だ。私にはできない。 「い、いい加減にしてくださいっ!」 「なんだと!?」 部長の手が再度こちらにバッと伸びてきて、怯えた私は椅子から離れようとしてバランスを崩す。 ――ガチャンッ、と可動式の椅子がそれなりの重さを伴った音を立てて倒れる。
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