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「いや……、はは……」
「挙句……」
止まった靴音。
私と部長がいるところまでいらっしゃった吉川さんが、いまだ尻もちをついたままで固まっている私を、部長の頭越しに目で捉えた。
あ……、目が、合った……。
雨の音がうるさいはずなのに、私にとってその瞬間は静寂だった。
いつものスーツ姿。
でも少し濡れた髪と肩。
運転するときしかつけていない眼鏡をかけたまま、冷ややかなキツネ顔をもっと鋭くしたような表情。
高い位置から見下ろされて、これまた迫力二倍。
「……何を、されました?」
「いや、だから吉川さん、道野は転んだだけで」
「あなたには聞いていません」
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