26

17/38
前へ
/38ページ
次へ
静かな、でも低く響く声に、ゴク、と喉が鳴った。 今度は私が聞かれている。 何か……何か言わなきゃ。 「何をされました?」 再度聞かれる。 あの目、だ。 人を見透かすように射抜く、あの、吉川さんの……目。 「あ……、いや、ホントに自分で勝手に転んだだけで。 何かされたとか、そんな」 「ほら、言ったとおりでしょ!? 吉川さん、そんな怖い顔しないでくださいよ。 ほら、道野も立って」 私の言葉を受けて、急に陽気になった部長が、振り返って私の手を握って体を起こそうとする。 「――っやっ」 無意識だった。 私は咄嗟に拒否反応が出てしまい、思わず手を引っ込める。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3828人が本棚に入れています
本棚に追加