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「今すぐ社長に電話をして貴方を左遷か解雇してもらうよう進言することも、もしくは警察に電話して来てもらうこともできますが」 「どっ、どうしてそんな話になるんですか? 道野もだが、大げさ過ぎるだろ、そんなことで」 「“そんなこと”?」 ぐいっと部長が引っ張られる。 背の低い部長は、吉川さんとの身長差があるからか、ネクタイの結び目を掴まれて、後ろから見ると、かなり間抜けな図だ。 宙吊りになりそうなほど足元が不安定で、軽くつま先立ちしている。 「あなたにとっての“そんなこと”で嫌な思いをしたり迷惑を受けたりしている社員が、道野さん以外にもいるのでしょうね。 容易に想像できます」 まるで温度を持っているとは思えない顔。 ぐっと近づけたその顔でそう言ったかと思うと、思いきり突き放すように手を離した吉川さん。
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