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「そ、そんなこと言っても、私はパソコンが苦手で」
私を見た後、振り返ってそう言った吉川さんに、及び腰の部長がすがるような目で訴える。
「あと、何をすればいいのですか?道野さん」
「え?……あ。もう入力は終わっていて、一回チェックしてるので、もう一度チェックして確認してから出力しようと……」
「だそうです。よかったですね」
まるで棒読みで感情のこもらない声を落とす吉川さんに対し、
「しゅ、出力だけなら、すぐに、ほら、道野、な?」
と、部長は凝りもせずに私に助け船を求めてくる。
ダンッ、と机の一番下の引き出しを蹴る音に、「ひっ」と肩を上げる部長。
ついでに私も。
「印刷ボタンくらい、自分で探してください」
私は後ろにいるから表情は見えないが、軽く首を傾けてそう言った吉川さんの顔は、部長の凍りついたような目と、「……はい」という蚊の鳴くような声から簡単に想像がついた。
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