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エレベーターが一階に着き、私が開くボタンを押し続けて吉川さんに先に出てもらうと、吉川さんはまたもやツカツカと進んでいく。
私は置いて行かれないように、再度小走りでついていこうとする。
「……っ」
ビルのエントランスの自動ドアの前で、左足に再び痛みを感じ、立ち止まった。
私の靴音が途切れたからか、数歩先を歩いていた吉川さんが歩みを止め、足をさすっている私を振り返る。
「大丈夫ですか?
足、どうかしました?」
「あ……、さっき椅子から落ちた時に打ってしまって」
「……」
カツ……、と音が響く床。
吉川さんが私の前まで来て、
「腕に」
と、体を私の方へ傾けて、肘を曲げた腕を突き出した。
「あ……、す、すみません」
嘘ではなかったけれども、私は嬉しさとともに小さな罪悪感を抱いた。
だって、多分、私は、もっと近付きたいと思っていたから。
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