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「あの、これを使ってください。 あと、これも」 車を再度発進させた吉川さんに、ハンカチと、寒い時用に常備している紺色のカーディガンを渡そうと手を伸ばす。 それを横目で見ながら、 「けっこうです。 それより、病院に寄りましょうか?足が痛むのではないですか?」 と返す吉川さん。 「だっ、大丈夫です!そこまでの痛みじゃないので。 それより吉川さんが風邪ひいちゃうので」 ずいっと、あまり吸水性のなさそうなカーディガンを懲りずに吉川さんの腕に押し付ける。 だって、以前みたいにスーツで拭くよりはマシだと思うんだ。 「……」 赤信号で止まり、静かにそれを受け取る吉川さん。 しばらく考えた後、 「……クリーニングに出して返します。来週の巡回時に」 と言って、私のハンカチとカーディガンで頭や肩を拭いた。
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