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「もう少し」
ショボショボした目頭をキュッと押さえる。
グー、と鳴ったお腹をさすって、もうひと踏ん張り頑張ろうと肩の上げ下げ運動をすると、私の気合いに反して、雨の音が一際大きくなった。
「……」
すごい雨……。
やる気を一時削がれながら、ぬるくなったブラックコーヒーをすする。
途切れた集中力は、あっと言う間に私をあの人に関する物思いに舞い戻らせた。
「……来週、か」
来週は月末だ。
以前のように急用が入らない限り、経理チェックに吉川さんがいらっしゃる。
「……来週」
考えただけで心臓がバクバクする。
私は両手で頬を覆うという、いかにも乙女な姿勢で前のめりになった。
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