26-2

3/20
前へ
/40ページ
次へ
……どうしよう、怒ってる。 っていう気持ちと、 言うんだ。ちゃんと言うんだ。 っていう気持ちが、さっきから私の背中を引いたり押したり。 一言なのに。 たった一言なのに。 車内でも、駐車場でも、このエレベーターの中でだって、言おうと思えば簡単に言えるはずの一言なのに。 なんで、こんなに難しいんだ。 あれだけいろいろ考えて覚悟を決めたというのに、この往生際の悪さと勇気の無さと言ったらホント、我ながら……。 吉川さんの自宅の階に着き、チーン、という音と共にエレベーターの扉が開く。 吉川さんに続いて私も降りて、何度目かのこの廊下を進む。 無計画で行き当たりばったりの私は、案の定ガチガチで、一歩進むほどに心臓の鼓動が速く大きくなっていく。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4662人が本棚に入れています
本棚に追加