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女慣れしているからこそ出るセリフが軽く癇に障りながらも、私は抵抗する気のない自分を自覚する。
くすぐったさとか気持ち悪さとは違う感覚が、触れられる部分に生まれるたびに、あぁ、私はこうなってもいい、なんてどこかで思いながら彼と会っていたんだ、ということに気付かされた。
好きなタイプでもないし、誠実でもなさそうだし、口は減らないし、むしろ痛いところを狙って突いてくるような嫌味な男。
でも、こうやって毎日のように会うようになった初日に、ともに朝を迎えたって時点で、すでに諦めというか、覚悟というか、あとは野となれ山となれ感を持っていたのかもしれない。
自分がそう思えるタイプだったなんて、新発見だけれど。
「ここでは嫌です」
「ふ。なんか、色気もなく事務的な言い方。面白いね、やっぱり、中園さん」
本当は立っていられなくなっていたのにそう言って、持ち前の負けず嫌いを発揮した。
多分、彼にはお見通しなんだろうけれど。
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